JAAA 作品展 2026 出展作品 4点
アルコールインクは、計算できない画材です。広がり、にじみ、ほかの色と溶け合いながら、こちらの意図を超えた形を生み出します。
私はその偶然性に導かれながら、アクリル、水干絵具、墨、ユポ紙、木製パネルなど、異なる素材を重ねてきました。感謝、思いやり、時間、記憶、そして人が迷いながらも前へ進む力——目には見えないものを、かたちにするために。
弱さを守るもの。断片を宝石に変えるもの。迷いの中に、それでも線を引くもの。深く沈むことで、はじめて見えてくるもの。
今回の4作品は、ARTVREの4つのコレクションを通して、私自身の表現の、現在地を示すものです。
Saki Fujita
藤田 紗妃
ARTVRE
4つのコレクションが、この作品展の骨格をなしています。
Collection 01
花をモチーフに、愛・感謝・思いやりを表現するコレクション。染料インクの繊細さをアクリルや顔料系素材が守るという構造そのものが、支え合いの比喩となっています。
Collection 02
制作過程で生まれたアートの断片を再構成し、宝石のような存在へ昇華させるコレクション。余白や欠片とされたものが、視点ひとつで輝き出す。
Collection 03
抽象的な色彩の上に線を引き、具象モチーフを描くコレクション。柔らかく女性的なアートだけれども、自身のルーツを守り、迷いながらも前へ進む強さを込めています。
Collection 04
自然、鉱物、層、時間の記憶を扱う抽象画コレクション。表面の美しさにとどまらず、深く潜ることで見えてくるエネルギーや記憶を描きます。
各作品の背景・素材・制作意図
祝福の門に、花と蝶が降り立つ。
門には、いくつかの役割があります。人を迎え入れる門。誰かの帰りを待つ門。そして、新しい場所へそっと送り出す門。
本作は、「GATE」をテーマに開催した展示会からの着想をもとに制作されました。祝福の門を花で飾るイメージから始まり、そこに蝶も降り立ちます。
蝶は花から蜜を得て生き、花は蝶によって受粉し、次の命へとつながっていく。一方だけが与え、一方だけが受け取るのではなく、互いの存在が互いを支えている関係。
この作品では、アクリル素材の蝶が、染料インクで描かれた繊細な花の上に置かれています。アルコールインクの持つ繊細さや儚さを、透明なアクリルがそっと守る——その構造そのものが、FIOREコレクションが扱う「見えない思いやり」と「支え合い」の表現です。
Viewing Points
断片は、もう一度宝石になる。
ALEXSANDRITEは、藤田紗妃の代名詞ともいえる「Alcohol Ink Art Gem」シリーズの作品です。宝石をモチーフにしたアートへの挑戦は、アルコールインクアートを始めた初期から続いてきたテーマでした。
なかでもアレキサンドライトは、最初に制作した宝石モチーフのひとつ。今回はその原点に立ち返りながら、積み重ねた技術と、アクリル素材を扱う協力企業との出会いによって、改めてブラッシュアップした作品です。以前は実現できなかった質感、透明感、立体感を、今だからこそ形にすることができました。
REINEは、制作過程で生まれたアートの断片を再構成し、宝石のような価値へと昇華させるコレクション。一度は余白や欠片とされたものが、視点と構成によって再び輝き出す——その考え方がこの作品の核にあります。
Viewing Points
迷いながらも、線を引く。
抽象画は、同じ色、同じパターンであっても、見る人によって受け取り方が変わります。その自由さが魅力であり、この表現形式の面白さでもあります。
E04. ROSEでは、抽象的な色彩の上に、あえて強い線を引いています。香水瓶という可憐なモチーフを持ちながら、そこに込めているのは「未来を切り開く力」——人に静かな勇気を与えるための作品です。
遠くから見ると、墨の線は力強く、迷いなく見えます。けれど近くで見ると、細かな筆跡、揺らぎ、ためらい、重なりが見えてきます。それはただ真っすぐに突き進む強さではなく、迷いながらも、それでも前へ進む強さ。
素材には水干絵具と墨を用いており、藤田紗妃のルーツでもある日本的な素材感を重ねています。香水瓶の中には、見えない時代の流れと、未来を切り開こうとする意志が閉じ込められています。
Viewing Points
琥珀は、時間を閉じ込める。
アルコールインクアートを始めた頃から、藤田紗妃は宝石、花、スイーツなど、モチーフを定めた作品に挑戦してきました。「この作品といえば藤田紗妃」と感じてもらえるよう、抽象の美しさを具象に近づける工夫を重ねてきた歴史があります。
その積み重ねがあったからこそ、今、ようやく抽象画に戻ってこられた感覚がある——AMBERはそうした作品です。アルコールインクアートとの最初の出会いは一目惚れでした。淡く優しい作品も大切にしながら、自分の内側には、それとはまた違う、もっと深く、温かく、熱を持ったものがある。
今回のモチーフは琥珀(アンバー)。樹脂が長い時間をかけて固まり、時に小さな命や空気、時代の痕跡を内側に閉じ込める存在です。この作品では、レイヤーを重ねることで時間、記憶、奥行き、温度を表現しています。
表面だけを眺めるのではなく、深く潜ることで見えてくるもの——それがESMERALDAの世界であり、AMBERが問いかけていることです。
Viewing Points
Imagination gently
changes the world.
会場でこの作品たちに出会ってくださったこと、
そしてこのページを開いてくださったことに、深く感謝いたします。
作品の前で感じたことを、どうかそのまま持ち帰っていただけたら。
それがARTVREの願いです。
作品をご覧いただき、ありがとうございました。
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